「NASを買うべきか、クラウドにすべきか」——この問いを抱える企業は少なくありません。どちらを選んでも欠点があり、正解は規模・用途・データ量次第。この記事では、NASとクラウドストレージの特性を4つの軸で整理し、自社に合う選択の判断基準を示します。

NASとクラウドストレージ、根本的な違い

NAS(Network Attached Storage)はLANに接続する物理ストレージ機器で、オフィスや自宅のネットワーク内でファイルを共有します。代表的なメーカーはQNAPやSynology。自社設備内にデータが存在するため、インターネット接続がなくてもアクセス可能です。

クラウドストレージはインターネット越しにデータを預けるサービスで、データの保管先はプロバイダーのデータセンターです。HStorageのように日本国内で管理するサービスもあれば、Google DriveやDropboxのようなグローバルサービスもあります。

どちらも「ファイルを保存・共有する」という目的は同じですが、データの所在・管理責任・コスト構造が根本的に異なります。

NASとクラウドストレージの比較図解

4軸での比較

1. コスト(5年間TCO)

NASの初期費用は機器代+HDDで、2ベイ4TBの構成なら5〜15万円程度です。電気代・保守費を合わせた5年間の総所有コスト(TCO)は20〜30万円ほどになります。

同規模のクラウドストレージを5年間使い続けると、月額費用の積み上げで70〜80万円超になるケースも少なくありません。5ユーザー・4TBで比較した場合、NASのほうが5年間で50万円以上のコスト差が出るというデータもあります。

ただしこの試算は「データが増えない」前提です。業務ファイルが年率25%以上で増えるなら、HDDの追加や機器の買い替えが必要になります。故障時の対応コストや設定・保守に充てる人件費もNAS側の負担です。

クラウドなら初期費用はゼロで、使った分だけ支払います。データ量が読めない段階や、ITメンバーが少ない組織には現実的な選択肢です。

2. 速度・アクセス性

LAN内のNASへのアクセス速度は、有線接続なら80〜150 MB/s程度です。大容量の映像ファイルや設計データを頻繁に扱うなら、NASの速度優位は見逃せません。

クラウドストレージの速度は回線品質に左右されます。フルHD動画の編集データを複数人で扱う用途では、転送速度がボトルネックになりがちです。一方、リモートワーク中心の組織なら、オフィスのLANに縛られないクラウドに軍配が上がります。

外出先からNASにアクセスするにはVPN設定が必要で、手間と速度低下が伴います。クラウドならブラウザとインターネット接続さえあれば、どこからでもアクセス可能です。

3. セキュリティとデータ主権

NASは自社設備内にデータが存在するため、外部からのアクセスリスクは低めです。ただし、ランサムウェア被害でLAN内のNASが暗号化されると、バックアップもNAS上にある場合は一緒に被害を受けます。オフサイトへのバックアップは欠かせません。

クラウドストレージでは、プロバイダーが暗号化・冗長化・アクセス制御を管理します。データはデータセンターに保管され、法的な開示請求への対応はプロバイダーの規約次第。機密性の高い業種(医療・法律・金融)では、データの保管場所と管理責任の確認が欠かせません。

HStorageは日本国内のデータセンターでデータを管理しており、プライバシーポリシーも日本法準拠です。外資系サービスへのデータ預け入れに慎重な企業は、国内サービスを選ぶことでリスクを抑えられます。

4. 運用・管理

NASは購入後の設定・ファームウェア更新・故障対応をすべて自社で担います。RAIDの設定やユーザー管理、バックアップスクリプトの整備など、ITリソースが一定量必要です。

クラウドストレージではインフラ管理をプロバイダーが担います。アップデートやハードウェア交換への対応は不要で、IT担当者の工数を別の業務に回せるのが利点です。

オフィスのNASとクラウドストレージを連携した業務環境

どちらを選ぶか——判断基準

条件 推奨
2TB以上のデータを5年以上保持する NAS
リモートワーク中心で外部アクセス重視 クラウド
IT担当者がいない・少ない クラウド
動画・設計データなど大容量ファイルを頻繁に扱う NAS(LAN高速)
災害対策・オフサイトバックアップが必須 クラウド(またはハイブリッド)
データの国内管理が必要 国内クラウド(HStorage など)

「どちらか」で決めようとすると失敗しがちです。多くの組織にとって、NASとクラウドを組み合わせたハイブリッド構成が現実的な選択肢になります。

ハイブリッド構成の実践例

構成:LAN内NAS + HStorage(クラウドバックアップ)

日中の業務ファイルはNASに置き、LAN内で高速アクセスします。夜間にrcloneやrsyncでNASからHStorageへ差分バックアップを送る構成です。これで3-2-1ルール(3コピー・2媒体・1オフサイト)を満たせます。

# NASからHStorage SFTPへの差分バックアップ(毎日午前2時)
0 2 * * * rclone sync /mnt/nas/documents hstorage-sftp:/backup/documents \
  --log-file=/var/log/rclone-nas-backup.log \
  --log-level INFO

HStorageのバージョン管理機能を有効にしておけば、NASのファイルが誤って上書きされてもクラウド側の履歴から復元可能です。

この構成なら、NASの速度とクラウドの冗長性を両立させつつ、クラウド側のコストをバックアップ分だけに抑えられます。

HStorageがクラウド側として選ばれる理由

HStorageはSFTPとWebDAVの両プロトコルに対応しているため、NASのバックアップソフトやrcloneからそのまま接続できます。プロトコル変換のための追加ツールは不要です。

バックアップ専用のSFTPユーザーを作成し、書き込み専用権限に絞れば、バックアップ経路からの不正アクセスリスクを下げられます。データは日本国内で管理されるため、業務上の要件が厳しい企業にも対応可能です。


NASとクラウドは競合するものではなく、役割を分担するものです。高速LAN内アクセスはNAS、オフサイトバックアップと外部アクセスはクラウド——この分担で設計すれば、コストと利便性のバランスが取りやすくなります。

HStorageのSFTP・WebDAV機能については以下の記事も参考にしてください。